Ibashoフィリピンの「モバイル・カフェ」プロジェクト

フィリピンのオルモック市、バゴング・ブハイで活動する「Ibashoフィリピン」のメンバーは、2016年に入って「モバイル・カフェ」の活動を行なっています。
「モバイル・カフェ」は2015年10月末に開催したワークショップで提案されたもの。「Ibashoフィリピン」では「居場所ハウス」のような拠点となる建物を建設できる資金はない。けれども、建物が完成するのを待っているだけでは何も始まらない。
そこでメンバーはペットボトルのリサイクルを行ったり、農園で収穫した野菜を販売したりすることで活動資金を少しずつ貯めてこられました。これらに引き続く3つ目の活動とし提案されたのが「モバイル・カフェ」です。
「モバイル・カフェ」屋台で食事などを販売することで、活動資金を獲得すると同時に、いずれ拠点が完成した際にどのような活動が展開できるかを確かめるという目的もあります。現在は正式に「モバイル・カフェ」を行う前の段階として、試験的な活動が進められています。

「Ibashoフィリピン」の最近の活動の様子を教えていただきましたので、「居場所ハウス」のみなさんにも見ていただくために、ここに紹介させていただきます(以下は「Ibashoフィリピン」のFacebookのページの文章・写真を元にしています)。


2月17日、バゴング・ブハイの高齢者が参加する集会が開かれました。1月の「モバイル・カフェ」の1回目のトライアルに参加したメンバーへの感謝状の贈呈と、他のメンバーへの「モバイル・カフェ」への協力の要請が集会の目的です。

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モバイル・カフェ」の2回目のトライアルは2月22日からスタート。2月23日の朝には高齢者のグループが集まり、日本の「焼きそば」に似た食事を作り、販売したところ完売。「Ibashoフィリピン」のコーディネーターはこの日の出来事について、こうした活動はより組織化された活動となり、「Ibashoフィリピン」の継続に寄与するだろうと書いています。同じ2月23日の午後には、メンバーの1人がジャックフルーツ(和名パラミツ)を調理。これは翌日の「モバイル・カフェ」で販売するためだとのこと。

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2月24日には「モバイル・カフェ」で何種類かの野菜料理が販売されました。道路にテーブルを出して販売するだけでなく、メンバーが地区内を売りに歩きました。2時間もたたないうちに完売したとのことです。

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2回目のトライアルも成功裏に終わり、3月9日には協力したメンバーへの感謝状の贈呈が行われました。コーディネーターは、メンバーの協力により正式な「モバイル・カフェ」の実現に近づいたと書いています。

3月16日、コーディネーターは「モバイル・カフェ」を正式にスタートさせるにあたって傘、カゴ、帽子の値段を確認。これらは「モバイル・カフェ」での販売にあたって日射しを遮るためのもので、傘、カゴ、帽子にはお揃いの目印をつけることが考えられています。高齢のメンバーはプロジェクトに前向きで、試験的な「モバイル・カフェ」の結果をふまえ、実現可能な「モバイル・カフェ」のあり方を検討しているとのこと。

3月17日には毎週木曜の夜に定例で開かれているミーティングが開催されました。この日、メンバーは「モバイル・カフェ」、農園の今後について話し合ったとのこと。最近は「モバイル・カフェ」に注力していたため、農園は新たな展開はないけれど、メンバーにはより多くの野菜を収穫するための計画があるとのこと。また、この日の定例ミーティングでは現在、任意団体として活動している「Ibashoフィリピン」を非営利組織として国に登録する手続きについても話し合われたとのことです。なお、ミーティングの前には、メンバーの1人の誕生日のお祝いも行われました。


最近の「Ibashoフィリピン」の活動を紹介させていただきました。「居場所ハウス」のような拠点は今すぐには実現できなくても、自分たちでできるところから、少しずつ活動を展開し、活動資金も貯めておられる「Ibashoフィリピン」からは、こちらが教えられることも多いと感じます。

また、ワシントンDCの非営利組織「Ibasho」の役割についても考えさせられます。バゴング・ブハイは台風ヨランダ(2013年台風30号)の被害を受けた地域。
被災直後は人命救助、食糧確保、住まいの確保など様々な支援が必要。しかし、「Ibasho」はそのような支援を行っているわけではありません。「Ibasho」とは生産活動からは引退し、一方的に面倒をみられる存在だとみなされる傾向にある高齢者が、自分にできる役割を担うことで、地域に関わりながら暮らし続けることができるような社会の実現を目指して活動しています。
「Ibasho」は大船渡、フィリピン・オルモック市、あるいは、ネパールと被災地でのプロジェクトを行っていますが、以上のような意味で、被災地支援ではなく、日常の暮らしに焦点をあてた活動を展開していると言った方がよいと思います。
「Ibasho」との出会いによって、バゴング・ブハイの高齢者たちはリサイクル活動、農園、「モバイル・カフェ」といった活動を行うようになった。こうした活動を始めるために、高齢者の背中を押した、あるいは、種まきをした。この部分が最も重要な役割だと言ってよいかもしれません。
高齢者の背中を押す、種まきをするという役割は、「Ibasho」が小さな団体だったから可能だったのか? あるいは、大きな団体でも担える役割なのか? という点については、十分に考える意味のある問いだと思います。さらに、日常の暮らしに焦点をあてているにも関わらず、被災においてプロジェクトができる(プロジェクトを始めるきっかけが見つかりやすい)という点についても考える意味のある問いだと思います。

(更新:2019年2月21日)