居場所に関する書籍、『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)が刊行されましたので、ご案内いたします。
田中康裕『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』水曜社, 2021年
近年、介護予防の場所として注目を集める居場所。
2000年頃から同時多発的に小規模な場所として開かれるようになった居場所は、その後、全国に広がりをみせ、介護予防の機能を担うことが期待されるようになった。そして元々、制度や施設の外側として開かれた居場所が、逆に制度や施設のモデルにされるという動きも生まれている。しかし本来の居場所は既存の制度や施設の枠組みでは上手く対応されない切実な要求に対応するために開かれてきた経緯があり、「生きる喜びや楽しみ、自己実現の場」、「地域に生きる安心につながる」ことを目的とした場所である。
本書では、筆者がこれまで調査、運営のサポートに携わってきた先駆的な居場所の実態を紹介するとともに、居場所と施設を比較・分析し、制度化される過程で見えにくくなってきた本来の役割を明らかにする。
訪れた一人ひとりの要求への対応により多機能化する居場所は「結果として」介護予防が実現されていく場であり、制度と施設の外側から日常を豊かにしてゆく。その実現を目指し、活力ある地域の構築を論究する。
目次
□はじめに
居場所の現場からの問題提起
本書の構成
□プロローグ
1.居場所と新型コロナウィルス感染症
2.5つの居場所との関わり
3.本書における用語・表記
□第1部:居場所の姿
□第1章:5つの居場所
□第2章:親と子の談話室・とぽす
□第3章:下新庄さくら園
□第4章:ひがしまち街角広場
□第5章:居場所ハウス
□第6章:実家の茶の間・紫竹
□第2部:居場所の可能性
□第7章:居場所をめぐる小史
1.制度・施設の外側の場所
2.居場所の制度化
□第8章:制度化における機能の先行
1.多機能化していく居場所
2.制度化における機能の先行
3.第三者としての専門家による要求の先取り
4.目的としての介護予防と結果としての介護予防
□第9章:居場所に備わってくる機能
□第10章:要求への対応により育つ理念
1.主(あるじ)による要求への対応
2.具体例により豊に育つ理念
3.理念の共有
□第11章:利用・参加ではなく居られる場所
1.場所を作りあげる当事者
2.居合わせる
3.居られる場所のしつらえ
□第12章:居場所を支えることの可能性
1.ハブ型から分散型へ
2.代理人からインタープリターへ
□おわりに