2019年6月、Ibashoプロジェクトが行われているネパールのマタティルタ(Matatirtha)村を訪問しました。今回の訪問にはUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)のフェローのダンサー・コレオグラファー(振付師)と写真家の2人も同行。2人はネパールを訪問するのは初めてです。
Ibashoマタティルタでは2016年から花壇、農園、堆肥作りをスタートさせ、その後、イヤリング、編み物の制作・販売などの活動が行われています。
Ibashoマタティルタで特徴的なのは「Ibasho as a Village」というコンセプト。拠点となる建物を建設しない代わりに、既存の場所で活動したり、あるいは、掲示板作り、チャウタリ(Chautari)の改修、農園脇への小屋(Hut)の建設など村の環境を改善したりすることを通して、村全体でIbashoの8理念を実現していくというコンセプトです。
訪問の1日目となる2019年6月18日(火)には、Ibashoマタティルタのメンバーに活動場所、そして、村を案内していただきました。
農園脇の小屋
最初にIbashoマタティルタのメンバーが手作りで作った農園脇の小屋に向かいました。メンバーが集まるのを待つ間、近況報告として先週の土曜日に開かれた「居場所ハウス」の六周年記念感謝祭の様子を紹介。
メンバーが集まったところで、歓迎のセレモニーを開いてくださいました。
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高齢者住宅
農園脇の小屋を出発した後、高齢者住宅(Matatirtha Oldage Home)へ。住民が委員会(Oldage Home Committee)を立ち上げ、チャリティで運営されている場所で、1人暮らしであったり、虐待を受けたりした約25人の恒例の女性が生活しています。
部屋でミーティングやワークショップを開いたり、プロジェクトの効果や課題を見出すための調査への協力を受けたりと、高齢者住宅はIbashoマタティルタにとって深い関わりのある場所です。
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マタティルタ寺院
次に向かったのがマタティルタ寺院(Matatirtha Temple)。マタティルタの村名は「母」を意味する「Mata」と、「神聖な場所」を意味する「Tirtha」の2つのサンスクリット語に由来します。マタティルタ寺院には、村名の由来になっている母の像が祀られた神聖な池があり、毎年、母の日には多くの巡礼者が訪れるということです*1)。
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掲示板・チャウタリ
Ibashoマタティルタのメンバーが作った掲示板のある場所へ。掲示板のフレームを中心になって作った元大工の男性が、掲載されている地図を紹介。地図もワークショップを経て作られたもので、Ibashoマタティルタの活動場所、村の主な場所、地震の時に避難できる場所が描かれています。
掲示板の隣には、Ibashoマタティルタのメンバーが改修したチャウタリ(Chautari)。ネパールでは菩提樹の木の下が舗装され、座れるようになっている。これがチャウタリと呼ばれる場所です。
この場所にあったチャウタリは高齢者が座りにくい形であったため、Ibashoマタティルタのメンバーが改修、塗装を行いました。訪れた時、何人かがチャウタリに座っているのを見かけました。
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掲示板とチャウタリは村を走るメインの道路沿いにありますが、道路は舗装工事中でした。この道路に限らず、住宅建設など、マタティルタではあちこちで建設工事が行われており、2016年2月に初めて訪問した時に比べると、村の風景は大きく変化しています。
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女性グループの建物
女性グループ(Mahila Samuha)の建物も、Ibashoマタティルタのワークショップやミーティングで利用している場所です。女性グループのメンバーが自分たちでレンガを積んだり、塗装したりして作りあげた建物。女性グループのメンバーが自分たちで建てた建物として、自治体(Municipality)内では最大規模のものだということです。
2016年2月に訪問した時はまだ塗装されていない状態でしたが、その後、塗装され、さらに2階部分が増築。今回訪問した時には、屋外にトイレの建設が進められていました。
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BABA Place
マタティルタにあるヒンドゥー教の寺院(Shree Swasthani Temple and Narnarayan Baba Ashram)で、村の方が「BABA Place」と呼んでいる場所。村の方がBABAと呼ぶ人物が開いた寺院(BABAとは父の意味)。この人物は既に亡くなられたようですが、今でも隣接する僧院で生活、修行している僧侶がいるということです。寺院の敷地の一画には、BABAと呼ばれる人物の像を納めた建物が建設されていました。
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Ibashoマタティルタは、この日案内していただいたマタティルタ寺院、「BABA Place」を除く場所で活動を行っています。「Ibasho as a Village」のコンセプトの通り、Ibashoマタティルタは村に広がりを持って展開されています。
注
- 1)Ibashoのプロジェクトが行われているマタティルタは、マタティルタ寺院の周辺地域の呼称。行政区としては第三州・カトマンズ郡・チャンドラギリ市(Chandragir Municipality)のWard 6の一部である。なお、行政区では隣接するWard 8がマタティルタと呼ばれるが、Ibashoのプロジェクトが行われているマタティルタとは別の地域である。