ネパールのマタティルタ(Matatirtha)村ではIbashoマタティルタの活動が進められています。2016年から花壇、農園、堆肥作りをスタートさせ、その後、「Ibasho as a Village」(Ibashoの8理念が実現される村)をコンセプトとして、掲示板作り、チャウタリ(Chautari)の改修、小屋(Hut)の建設など、自らの手で地域の環境を改善していく活動を重ねてきました。
2018年12月末、IbashoマタティルタのメンバーへのIbasho Ambassadorのトレーニングが行われました。トレーニングはワシントンDCのIbasho代表のKさんによって行われました。目的は、今まで自分たちで取り組んできた活動のことを他の人に説明できるようにするため。もちろん、その過程で自分たちが取り組んできた活動を振り返ってもらうという意味もあります。
トレーニングは2018年12月25日(火)、26日(水)、28日(金)の3日間にわたって行われました。
トレーニング1日目
- 日時:2018年12月25日(火) 13:25~15:45
- 場所:マタティルタ村の女性グループ(Mahila Samuha)の建物ほか
- Ibashoマタティルタからの参加者:20人(男性3人、女性17人)
Trainingの目的の説明・自己紹介
- 13:25~13:45
最初にワシントンDCのIbasho代表のKさんからトレーニングの目的の説明がありました。この後、自己紹介として名前、好きな色とその色が好きな理由を順番に話してもらいました。
キーワードから連想する言葉
- 13:45〜14:35
3つのグループに分かれてもらい、グループごとに指定したキーワードから連想する10の言葉を模造紙に書いてもらいました。キーワードはマタティルタ(Matatirtha)、高齢(Old Age)、Ibashoの3つ。この後、グループごとに発表してもらいました。
発表された単語は以下の通りです。
- マタティルタ:
①母親を思い出す場所、②森、③豊富な水、④遊び場、⑤高齢者住宅(Oldage Home)、⑥農業、⑦土地、⑧公立学校(Government School)、⑨チャウタリ(Chautari)、⑩水力発電/ネパール電力局 - 高齢:
①知識とスキルの伝授、②寺院や宗教的な場所への巡礼、③他の世代へのアドバイス、④新しい事や知識の習得、⑤自分の考えに耳を傾ける誰かがいる、⑥孤独を感じるべきではない、⑦地域の文化・伝統の共有、伝授、保存、⑧参加し続ける努力をし続ける、⑨働き続けることができるという信念を持つべきである、⑩世話をしていない子どもたちを気にかける - Ibasho:
①チャウタリ(Chautari)、②高齢者、③健康な(Well)、④スキルの共有、⑤ディスカッション、⑥音楽・ダンス、⑦トラベル、⑧幸せな家族、⑨清掃、⑩一緒に集まる
Ibashoから連想する言葉は、これまでマタティルタでのIbashoプロジェクトで取り組んできた活動、プロジェクトで見られた光景が中心にあげられました。
Ibashoプロジェクトのツアー
- 14:35~15:45
これまでIbashoプロジェクトで取り組んだ活動を紹介するためのツアーを企画してもらいました。参加者からは、掲示板・チャウタリ(Chautari)のある場所、小屋(Hut)・農園のある場所、高齢者住宅(Oldage Home)の順番に回ればいいという提案がある。みなでこの順番で場所を訪れ、それぞれの場所について紹介してもらいました(それぞれの場所の詳細はこちらをご覧ください)。
15:45頃、小屋(Hut)を出て、高齢者住宅(Oldage Home)に向かいました。
トレーニング2日目
- 日時:2018年12月26日(水) 13:15~16:30
- 場所:パタンのソーシャルベンチャー「Bihani」のオフィス
- Ibashoマタティルタからの参加者:10人(男性2人、女性9人)
活動の振り返り
- 13:15~13:25
2018年6月、フィリピン・マニラののADB(アジア開発銀行)でのセミナーのために作成したスライドショー、写真のスライドを見て、これまで取り組んできた活動を振り返りました。
Ibashoの目的の説明
- 13:25~13:40
Kさんから、ワシントンDCのIbashoを設立した目的として、高齢者が孤立している状態を変えること、高齢者が若い世代や他の人に知識を伝えることでより良い地域にすることという説明。そして、ワシントンDCのIbashoは歳をとること(Ageing)と高齢者の役割(Roles of Elders)についての社会の認識(Social Perception)を変えることであることだという話がありました。
地域に対してできることのインタビュー・発表
- 13:40~14:00
2人ずつグループになってもらい、コミュニティに対して何ができるかを互いにインタビューしてもらいました。その後、順番に発表してもらいました。
日本とフィリピン訪問から学んだんことの紹介
- 14:00~14:20
2016年10月に大船渡の「居場所ハウス」など、2018年6月にフィリピン・オルモック市の「Ibashoフィリピン」などを訪問したメンバーに、訪問で感じたことを話してもらいました。
訪問で目にした活動は自分たちにとっても参考になった、高齢者が活動していることを目にすることができた、自分の年齢で海外を訪問し掲示板作りに寄与できた、自分たちの活動の方が多世代になっていることがわかったなどの意見が出されました。
次にKさんが写真のスライドを使って、「居場所ハウス」、Ibashoフィリピンの活動を紹介しました。
Ibashoの8理念が実現されている具体的な光景の共有
- 14:20~14:50
Ibashoの8理念が「居場所ハウス」、Ibashoフィリピン、そして、Ibashoマタティルタでどのように実現されているかを共有するために、Kさんが写真のスライドを使って、それぞれの理念が実現されている具体的な光景を紹介していきました。
Ibashoマタティルタの活動の紹介方法の検討
- 14:20~15:45
2つのグループに分かれてもらい、グループごとにIbashoの8理念を模造紙に描いてもらいました。そして、Ibashoの8理念とともに、自分たちが取り組んできた活動を紹介する方法をグループで話し合ってもらいました。
*15:10〜15:25は休憩
Ibashoマタティルタの活動の紹介
- 15:45~16:25
他の地域から来た人に自分たちの活動を紹介するという想定で、グループごとに活動を紹介してもらいました。
発表の後、言葉をただ並べるのではなく自分たちの物語を話した方がいいこと、8理念の最後に「完全を求めないこと」(Embracing Inperfection)があるように試行錯誤(トライアル&エラー)で活動の改善をしてきたことを伝えた方がいいことなどのアドバイスがありました。
3日目のトレーニングの内容の紹介
- 16:25~16:30
トレーニング3日目
- 日時:2018年12月28日(金) 13:20~16:10
- 場所:マタティルタ村の女性グループ(Mahila Samuha)の建物
- Ibashoマタティルタからの参加者:17人(男性3人、女性14人)
Ibashoマタティルタの地図の作成
- 13:20~13:45
「Ibasho as a Village」(Ibashoの8理念が実現される村)のコンセプトを共有するため、模造紙にIbashoマタティルタが取り組んできた活動場所の地図を描いてもらいました。活動場所に加えて、参加しているメンバーの家の位置も記入してもらいました。
Ibashoの8理念の具現化についての意見交換
- 13:45~14:35
地図に描かれた農園、小屋(Hut)、女性グループ(Mahila Samuha)の建物、チャウタリ(Chautari)、掲示板、公立学校、高齢者住宅(Oldage Home)について、参加者にどのように関わるかを質問。
次にそれぞれの場所において、Ibashoの8理念をどう実現するかのアイディアを紹介してもらいました。参加者からは次のような意見が出されました。
- 「高齢者が知恵と経験を活かすこと」 (Elder Wisdom):
小屋・農園では楽器の演奏の仕方を教える、収穫した野菜を乾燥させる、若い世代にBiodynamic農法を伝える、女性グループの建物では音楽などを学ぶプログラムを開催する、掲示板を使って活動を紹介するようにするなど - 「あらゆる世代がつながりながら学び合うこと」(Multi-generational):
農作業や建設作業を子どもに教える、子どもにヌードルを提供する、若者グループ(Youtu Group)のメンバーを農園に招待して有機農法の方法を教えるなど
プロジェクトを持続可能にするための意見交換
- 14:35~15:10
Ibashoマタティルタの活動を持続可能にするために、多くの人に活動に参加してもらう方法や活動を通した収入などについて意見交換しました。参加者からは村の人がIbashoのことを十分に理解していないことが課題である、この場にいる全員が週に1回でも小屋・農園に来て活動してくれたらもっと良いものになるなどの意見が出されました。
明日(12月29日(土))、11時に小屋に集合し、小屋の周りの排水作業をすることが確認されました。
休憩
- 15:10〜15:30
参加者への質問
- 15:30~16:00
Kさんが参加者それぞれに、Ibashoの活動を通してどのような地域を実現したいか? 自分が歳をとったらどのような祖父母になりたいか? を質問。
次に参加者からKさんに、自分たちの活動に何を期待するかという質問がありました。これに対してKさんから、日本やアメリカでは、お金があって綺麗な家に住んでいても孤立している高齢者がいる。Ibashoマタティルタにはコミュニティを大切にすること、多世代の活動になることを期待しており、Ibashoマタティルタからコミュニティの精神を学びたいという話がありました。
最後にKさんが、Ibashoの活動に対して明日からできることは何か? を順番に質問していきました。
授与式
- 16:00〜16:10
Ibasho Ambassadorの授与式を行い、最後でみなで記念撮影をしました。
トレーニングが終わった後、Ibashoマタティルタに積極的に関わっていて、最近亡くなられた方の家に参加者みなでお見舞いに行きました。
以上のように3日間のIbasho Ambassadorのトレーニングを行いました。
ちょうど1ヶ月前、IbashoフィリピンでもIbasho Ambassadorのトレーニングを行なっています。IbashoフィリピンではIbashoの8理念の翻訳、拠点となる建物の位置付けについて時間を割いたのに対して、Ibashoマタティルタでは実際に村を歩いたり、活動場所の地図を描いたりしてもらいました。それは、Ibashoマタティルタでは拠点となる建物を建設しない代わりに、「Ibasho as a Village」(Ibashoの8理念が実現される村)というコンセプトを大切にしているからです。
このように地域に応じたかたちでのトレーニングとなりましたが、いずれも自分たちの活動を振り返ること、他の人に自分たちの活動を紹介できるようになることという目的は同じです。