ネパール・マタティルタ村にて防災に関するワークショップ・地図作りを行いました

2017年8月2日(水)~8月11日(金)まで、Ibashoプロジェクトが進められているネパールのマタティルタ(Matatirtha)村を訪問しました。今回の訪問では掲示板作り以外にもいくつかを行いましたが、その1つが防災に関するワークショップです。

ネパールでは、2015年4月25日にM7.8の大きな地震が発生(2015年ネパール地震)。マタティルタ(Matatirtha)村も地震による被害を受け、現在でもトタン、レンガで作られた仮設住宅に暮らしている方がいます。

8月8日(火)〜9日(水)、高齢者住宅(Oldage Home)にて、2015年ネパール地震についての経験を共有することを目的とするワークショップを開催しました。

2015年ネパール地震発生時の行動

地震発生時にどこで、何をしていたかを伺いました。地震が発生したのは12時前であったため、自宅で昼食を食べていた方が多かったです。「家の2階で食事をしており、揺れが続いている中で〔手すりに〕つかまりながら下に降りた」、「1階でテレビを見ていたら、テレビが床に落ちた。揺れが続いている間は1階にとどまっていた」、「自分は家の外で食器を洗っていたが、子どもたちは家の中にいた」などの話を聞かせてくださいました。

もし次に同じくらいの地震が起きたらどうするかと伺ったところ、「外に出る」、「もし外に出ることができれば、外に出る。それが無理ならドアの陰、ベッド下など室内の安全な場所に隠れる」という方、逆に、外には出ず「家の中の安全な場所に隠れる」という方。高齢者住宅のRさんからは、「地震の時はテーブルやベッドの下、ドアの陰に隠れなさいと言われるが、それは良くないと思う。地震の時、押しつぶされて亡くなった人が多かった。一番良いのは、外に走り出ることだ」という意見。(日本では木造の住宅が多いのに対して)マタティルタ村の住宅はほとんどがレンガ造だという、住宅の構造による違いがこの意見に現れていると思います。

地震時に避難できるオープンスペース

地震の時に避難できるオープンスペースが、村のどこにあるかを確認するため、地図を描いてもらいました。ベースとなる地図がないため、村の地図自体を作ることから作業がスタート。メインの道路と目印となる建物などが描かれました。
そして、オープンスペースを塗りつぶしてもらったところ、高齢者住宅と学校の間、チャウタリ(菩提樹の下の村の人が集まる場所)の周り、高齢者住宅の近くのサッカー場、高齢者住宅の裏側の森(キノコ栽培をしている土地)など、特に高齢者住宅の周りにあるオープンスペースが多数あげられました。この他、Ibashoプロジェクトの拠点となる建物の近くや、寺院の周りにもオープンスペースがあるとのこと。
マタティルタ村でのIbashoプロジェクトのコーディネートをしている「Bihani」のSさんは、都市部と違い村にはたくさんのオープンスペースがあり、水も豊富にあるのは幸いなことだと話されていました。

2015年ネパール地震後の暮らし

ワークショップに参加された方は、程度の差はあれ家が何らかの被害を受けたとのこと。地震後の暮らしについては、例えば、次のような話を伺いました。

  • まず息子の家族の家に避難した。そして、竹を使って仮設の住まいを作った。
  • 自宅は古くて〔余震で〕倒壊する恐れがあったので、オープンスペースに出た。1週間くらいかけて自分で仮設の住まいを作り、2ヶ月間そこで暮らした。
  • 自分で仮設のテント(住まい)を作った。
  • 自分で仮設の住まいを作った。
  • 家が全壊したので、他の家を借りた。

特に男性の話に共通していたのは、竹など身の回りにある物を使って自分たちの手で仮設の住まいを作ったという話です。

掲示板のための地図作り

8月8日(火)のワークショップを通して、2015年ネパール地震時の行動、地震後の暮らしについての状況が少しわかったと同時に、もう1つ明らかになったのは村には(村の人の身近なところに)地図自体が存在していないということ。そのため、地図を作ること自体に意味があるのではないかという話をしました。
この時、Ibashoプロジェクトに関わる活動が村のどの場所で行われているかを載せる掲示板作りが並行して行われており、掲示板には地図を載せるのがいいという意見が村の方から出されていました。

そこで、8月9日(水)のワークショップでは、掲示板に掲載する地図の案を作り、その地図に防災に関する情報も追加するという作業を行いました。掲示板に掲載する地図の大きさは、約60cm角の正方形。掲示板に掲載するのと同じサイズの地図を模造紙に描いてもらいました。地図には目印になる建物、Ibashoプロジェクトに関わる活動が行われる場所、そして地震の時に避難できるオープンスペースの場所を描いてもらいました。

せっかく作った地図も活用されなければ意味がありません。今回のワークショップでは、実際に掲示板に掲載する地図を作るという目的を設定したことで、抽象的な話で終わるのではなく、具体的な活動にできたことがよかったと思います。この日作成した地図の案を基にして、高齢者住宅のスタッフDさんが地図を作成し、掲示板に設置することになっています。地図は、文字が読めない人でも場所がわかるようイラストでも表現される予定です。

なお、防災に関しては、次回以降に村を訪問した際、地震に関してIbashoプロジェクトで、あるいは、村でどのような備え、対応ができるのかを意見交換するためのワークショップを開催する予定です。