Ibasho Japanの設立メンバーは東日本大震災の被災地である岩手県大船渡市の「居場所ハウス」の立上げ、オープン後のサポート、調査研究、そして、2013年台風30号(台風ヨランダ)の被災地であるフィリピン・レイテ島、オルモック市での居場所プロジェクト(Ibashoフィリピン)の立上げサポートなどの活動を行ってきました。いずれも高齢者を中心とする住民が具体的な「居場所」作りを通して、豊かなコミュニティを築いていこうとするプロジェクトですが、こうしたプロジェクトは今後ますます必要になってきます。
また、岩手県大船渡市、フィリピン・オルモック市でのプロジェクトはワシントンDCの非営利法人「Ibasho」の呼びかけによってスタートしたものですが、長期的な視点にたったサポートをしていくためには日本で活動体制を整えておく必要があると考えました。
設立メンバーは以上のような意見交換を重ね、特定非営利活動法人(NPO法人)を立ち上げることとしました。
NPO法人Ibasho Japan 設立趣旨書
個人の長寿化と同時に少子化が進行した日本では、家族形態の急激な変化とそれに伴う地域コミュニティの衰退が大きな課題となっています。つまり、地域の高齢化と核家族化により、住民同士の繋がりや支え合いが希薄になってきていること、その結果防犯や安全という暮らしの基本に関わることはもちろん、子育てのための環境作りや地域独自の食文化や祭祀などの継承が困難になってくるなど、地域は多様な課題に直面しており、新たな視点での地域の再生が強く望まれます。
一方で人生90年時代が現実のものとなりつつある今日、体力的にもまた経験や知識においても現役世代に負けない高齢者には、地域コミュニティの活性化にあたり中心的な役割を果たす力があることが、既に明らかになってきています。
特に家族を構成する人数が急激に減少し、家族による介護力だけに期待できない現状では、元気な高齢者が弱くなっていく高齢者を支えながら、ともにその地域で老いていくことを可能にする地域づくりは喫緊の課題です。病や老いによる障害を抱えながらも地域住民同士のサポート体制により、住み慣れた自宅で尊厳を持って暮らすことが可能な地域作りへの取り組みは、国の政策としてもまさに緒に就いたばかりです。
このような状況下では、地域住民それぞれが暮らす場所をより良く知り、その長所も短所も自分たちの問題として受け止め、その中でどのような支え合いが出来るかを、まず自分たちで考え始めることが課題解決のための第一歩となるでしょう。
そのためには、人が自然に集まれる環境としての「居場所」の創出が必要になってきます。
公民館や、体育館、コミュニティセンターのような、決められたプログラムに基づいた活動を行うために、あらかじめ用意された場所ではなく、「場」そのものがもつ魅力で人が集まりたくなる、話したくなる、何か始めたくなるような、そのような「居場所」作りが求められているのです。
今後、日本と同様に急速に高齢化が進むアジア諸国等でも、同様の課題が生じてくることは明らかです。
特に東南アジアの国々では、現在機能している地域コミュニティを衰退させることなく、近代化を推進すること、また社会の支え手としての高齢者の役割の認識と強化に向けた普及・啓発事業を行っていくことが重要です。日本でも東南アジア諸国でも、高齢者が弱者としてではなく、豊かな知恵や技術をもち、コミュニティにおいて重要な役割を担い得る存在と見なされるような「居場所」作りを、地域住民自らの手で行う必要があります。
本団体の設立発起人らは、2011年の東日本大震災の被災地である岩手県大船渡市に、2013年6月にオープンした「居場所ハウス」の立ち上げと運営のサポートを行ってきました。また現在、2013年台風30号(台風ヨランダ)の被災地であるフィリピン・レイテ島のオルモック市でのプロジェクトの立ち上げに携わっています。これらのプロジェクトはいずれも、高齢者を中心とする住民が具体的な「居場所」作りを通して、豊かなコミュニティを築いていこうとするものです。前述のように、こうした取り組みは日本やアジア諸国で今後ますます必要になると考えられます。
地域住民が中心となって行う「居場所」作りに対しては、建物を建てて終わるような短期的な支援ではなく、折に触れてプロジェクトの理念を伝えたり、継続的な調査・研究によって明らかとなった資源や課題を還元したり、各地のプロジェクト同士を媒介することで、それに参加する住民同士が教え合い・学び合う機会をもうけるなど、長期的な視点にたったサポートが必要であると考えます。
以上の活動を行うためには、組織としての継続性が重要であること、そして、社会的信用を得て関連団体や行政との連携を深める必要があること等の観点から、法人としての申請を行うものです。
2015年4月20日